ドクターズコラム

2018年春「吉田先生の患者さんになられたので宜しくお願いします」

先日、「吉田先生の患者さんになられたので宜しくお願いします」と言う紹介状を持って患者さんが受診された。私は、肥満症と糖尿病が専門であるので、どのような患者さんかなと紹介状を読んでみた。その開業医さんにて25年前から2型糖尿病にて治療を受けておられた70歳の男性で、身長166㎝、体重71kg、血糖値233mg/dl、HbA1c9.5%、BUN79、CRE7.4、eGFR11.1、K+6.1と血糖コントロールが不良で腎症Ⅳ期の血液透析をすぐにでも必要とする状態の糖尿病患者さんであることがわかった。私は、糖尿病が専門と言っても初期の段階の肥満型2型糖尿病状態なら15%痩せて治してしまえと減量指導するとか、治らない糖尿病状態であると判断すれば糖尿病合併症である網膜症(失明)・腎症(透析)・神経障害(足壊疽)・脳梗塞・心筋梗塞・認知症を防ぐ為に、患者さんにその危険性を十分説明してこれらの合併症を予防する為、いっしょに頑張ってやって行きましょうと納得させてから、食事指導・運動指導・必要な方には薬物療法を全力で行っています。腎症の末期になったから私の患者さんになられたので送りますから宜しくと言われても、同じ送るならなぜもっと早く送ってくれなかったのかと悔やまれます。患者さんにその先生の所で今までどのような糖尿病治療を受けたのかを聞いてみると、甘いお菓子はやめるようにとか腹8分目にしとくようにとは言われたことはあったが、具体的に食事指導や運動指導は聞いたことがないとの事であった。ずっと血糖値とHbA1cを測り血糖値が高いと、薬の量を増やされてきました。1か月前、 足が腫れてきたというと初めて腎機能を調べると言われ、今日その結果を見て、今はもう私の患者というより、専門の吉田先生の患者になっている状態だから、紹介状を書くのですぐ行ってきなさいと言われて来ましたとのことでした。

今の段階で私が食事指導をするなら、1800kcal糖尿病腎臓食であり、おかずで食べる蛋白質も1日当たり40g(肉80g+魚刺身5切+牛乳200ml+卵1個+豆腐半丁のうち3種類選ぶ)で、炊いた野菜大量+おやつは缶詰のミカンや桃(シロップなし)+米飯5杯。味付けも塩分6g以下の薄味が必要な食事であろう。しかし、この方には腎臓が悪くなれば蛋白質と塩分摂取量を減らさなければならないことや、腎機能の悪化はK+高値に導き心臓へ悪影響を及ぼす為、生野菜をやめてK+を減らした炊いた野菜や缶詰の果物に変える必要があることを全く知らされていなかった。その為、ご本人は塩分の多いラーメンや塩昆布や漬けものが大好きで、最近ではミカンも1日6個食べていたとの事であった。すぐに腎臓内科に紹介して血液透析の話を聞くようにいうのもショックが大きすぎる状況であったので、 食事療法について時間をかけて指導して、食事記録を持って2週間後に再受診するように指示して帰ってもらった。2週間後、こんな食事指導は聞いたことがなかったと頑張られていたが、血糖値137mg/dl、BUN75.4、CRE7.2、eGFR11.2、K+5.5と少しは改善したが、下肢もまだかなり腫れており専門の腎臓内科へ血液透析の為に紹介した。後日送られてきた腎臓内科からの返事では、来週早速シャントを作り透析を開始しますとの事であった。

最近では、病診連携という言葉が当たり前になっていると思っていましたが、今でも専門でない糖尿病を25年間も抱えて薬だけ出しておけばそれで良いと考えている医師がいることが残念でなりませんでした。糖尿病患者の病診連携と言うのは。糖尿病発見時に専門医から糖尿病とはどのような病気であるのか、なぜ長年にわたって治療していく必要があるのか、また、どうすれば糖尿病合併症を防ぐことができるのか等を学び、その為の食事・運動療法の重要性を理解していただく。その後で、管理栄養士から詳細な食事指導を受け、さらに必要な場合には、専門医が投薬内容も決めた後、開業医さんに戻す。開業医さんはフォローアップしながら、3~6ヶ月毎に糖尿病治療がうまく行っているかを病院へ再紹介し、評価しなおすシステムのことです。開業医と病院がタッグを組んで地域に住む糖尿病患者さんをいっしょに守っていく。今回の経験を通し、私自身も含め開業医さんにも、この点を再度確認していただきたいと思いました。



第55号 しまばら通信より・2018年 春

<このコラムの執筆:糖尿病内科部長 吉田 俊秀

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